コイルばねの製作方法と工具の基本~手巻きと機械巻きの違いを解説~
コイルばねの製作には、「手巻き」と「機械巻き」の2つの方法があり、それぞれに使われる工具も異なります。
本記事では、手作業による製作方法と、最新の機械を使った製作方法について詳しく解説していきます。
手巻きで作るコイルばねの基本
手作業でのばね製作は、芯金に材料を巻き付けていくシンプルな方法ですが、精度を保ちながら成形するには、熟練した技術が必要です。
実際、金属ばね製造技能士検定試験では「手巻き」が課題として採用されています。
手巻きに必要な工具
手巻きによるコイルばねの製作では、以下の工具が使用されます
- 芯金:巻き付けの芯となる棒で、コイル径を決める重要な役割を持ちます。
- 手巻き用治具:芯金を固定し、安定した巻き付けをサポートします。
- 線止め:材料の端を引っ掛ける部分で、巻き始めの安定性を確保します。
- ピン:巻き付け中に材料がずれないよう、押さえるために使用します。
- 喰い切り:巻き終えた材料を切断する工具です。
- ハシ(プライヤー):巻き終わったばねのピッチを調整したり、引張ばねのフックを起こしたりするために用います。
これらの工具を駆使しながら、芯金にしっかりと密着させながらコイルを巻いていくことで、精度の高いばねが作られます。
職人による微細な調整が必要なため、手巻きはまさに技術と経験が試される製作方法です。
機械によるコイルばね製作~CNCコイリングマシンの仕組み
現代のコイルばね製作では、自動化が進んだCNCコイリングマシンが活躍しています。
手巻きと同様に芯金に巻き付ける方式の「旋盤式」と、材料を送り出してピンで曲げる「コイリングピン」方式の2種類があります。
コイリングピン方式の流れ
- リールスタンドから材料が引き出され、ストレートナーを通ります。これにより、材料の線ぐせが整えられます。
- フィードローラーで材料を送り出し、ワイヤガイドを通して加工部に進みます。
- コイリングピンが材料をコイル状に曲げ、コイルのピッチはピッチツールによって正確に調整されます。
- 最後にカッティングツールで切断され、1本のコイルばねが完成します。
コイリングピンのタイプ
- 1本ピン方式:通常のばね製作に用いられ、一般的なコイルばねに対応します。
- 2本ピン方式:コイル径が大きく、安定性が求められる場合に適しており、より大きなばねの製作に向いています。
コイリングピンやフィードローラーの精度、さらにはそれらの調整がばねの完成度に大きく影響を与えるため、機械の設定は非常に重要です。ばねのサイズや形状に応じて、細かな調整が求められます。
CNCコイリングマシンで可能になる形状のバリエーション
コイリングマシンは、操作をプログラムで制御するCNC(数値制御)により、様々な形状のばねを高精度に製作できるようになりました。
例えば、テーパーバネや樽型バネ、密着巻きが必要なばねも簡単に成形できます。
CNC制御の利点
CNC制御により、複雑な形状のばねも柔軟に成形できるため、機械の設定に応じて多様なばねを製作することが可能です。
また、手巻きでは難しかった形状のばねも、CNCの力でスムーズに製作でき、作り手の技術が問われる場面が減った一方で、精密な設定が求められます。
まとめ~コイルばね製作には技術と工具が不可欠
コイルばねの製作方法には、手巻きと機械巻きがあり、それぞれにメリットと技術的な工夫があります。
特に、CNCコイリングマシンの登場で、より高度な形状のばねも効率的に製作できるようになりましたが、工具の使い方や機械の調整技術は、依然として製作精度を左右する重要な要素です。
ばね製造の現場では、日々これらの技術と経験が結びつき、高品質なばねが作られています。ばね工場に訪れる機会があれば、是非その製作風景や使用されている工具に注目してみてください。