ばね材料の種類!ピアノ線とばね用ステンレス鋼線の比較
ピアノ線とステンレス鋼線の外観の違い
ピアノ線とばね用ステンレス鋼線は、一見すると似ていますが、色合いや触感に違いがあります。
例えば、ピアノ線は黒っぽい灰色で、ばね用ステンレス鋼線は白みがかっています。
しかし、表面の色で判断することは難しい場合もあります。
そこで、磁石を使って確認するのが一般的です。
ピアノ線は磁石に強く反応し、ばね用ステンレス鋼線はわずかに反応することが多いため、磁石を使って簡単に識別ができます。
JIS規格による標準線径と入手しやすさ
ピアノ線とばね用ステンレス鋼線には、それぞれJIS規格で定められた標準の線径があり、細いものでは0.08mmから12mmまで多様な太さが存在します。
例えば、ピアノ線の最大線径は10mm、ステンレス鋼線の最大線径は12mmです。
ただし、流通状況によっては入手が難しいサイズもありますので、必要な線径が手に入るか確認することが大切です。
引張強さと弾性係数
引張強さとは、引っ張る力に対する材料の強度のことで、ばねの耐久性に大きく関わる要素です。
ピアノ線は、ばね用ステンレス鋼線よりも高い引張強さを持っています。
例えば、線径が1mmの場合、ピアノ線の引張強さは2060~2260N/㎟で、ばね用ステンレス鋼線は1850~2100N/㎟です。
つまり、強度が必要な場合にはピアノ線が適していると言えます。
成形後の熱処理温度とその変化
ピアノ線とばね用ステンレス鋼線は、成形後に「低温焼鈍」という熱処理を行い、ばねとしての弾性を安定させます。
ピアノ線の熱処理温度は300°Cから350°C、ステンレス鋼線の場合は350°Cから400°Cです。
温度と時間が異なると、ばねの形状にも微妙な違いが現れることがあります。
例えば、線径1mmで外径26mmのばねの場合、熱処理後にはピアノ線が24.8mmに縮むのに対し、ステンレス鋼線は27.5mmに膨張します。
耐熱温度と耐食性の違い
耐熱温度と耐食性も、材料選びにおいて重要なポイントです。
ピアノ線の耐熱温度は約120°C、ばね用ステンレス鋼線は250°Cまで耐えられるため、高温環境下での使用にはステンレス鋼線が適しています。
また、耐食性に関してもステンレス鋼線は優れており、ピアノ線が錆びやすいのに対し、ステンレス鋼線は長期間耐えられることが実験結果からもわかります。
ピアノ線とステンレス鋼線の選び方
最後に、ピアノ線とステンレス鋼線の選び方についてまとめます。
ピアノ線は強度が必要な場面やコストを抑えたい場合に適しています。
一方、ばね用ステンレス鋼線は、耐食性や耐熱性が求められる環境での使用が望ましいです。
両方の特徴をよく理解し、用途に合わせて最適なばね材料を選びましょう。