ばねの「へたり」って何?ばねが疲れる仕組みをわかりやすく解説
ばねを長期間使用していると、最初に設計されたように働かなくなることがあります。この現象は「へたり」と呼ばれ、ばねにとって避けられない課題です。今回は、この「へたり」がなぜ起きるのか、その仕組みや対策について詳しく解説していきます。
そもそも「へたり」ってどういうこと?
「へたり」とは、ばねが使用されることで弾性が失われ、形状や力が変わってしまう現象を指します。ばねは最初、弾性ひずみ(元の形に戻る力)によって力を発揮しますが、長期間の使用によって塑性ひずみ(元に戻らない変形)が増え、設計された寸法や荷重を保てなくなってしまいます。この現象が「ばねのへたり」です。
リラクゼーションとクリープという現象の違い
「へたり」には「リラクゼーション」と「クリープ」という2つのメカニズムが関係しています。
- リラクゼーション:ばねが一定のたわみを維持する状態で荷重が失われていく現象。
- クリープ:ばねが一定の荷重を受けているときに、たわみが増えていく現象。
この2つの現象は、高温下で特に顕著に見られ、ばねが本来の性能を発揮できなくなる原因となります。
ばねの「へたり」を人間の疲れに例えると?
ばねの「へたり」を、私たち人間の疲れ方に例えることができます。たとえば、重い荷物を一度に持ち上げる重量挙げでは、短時間で体力が尽きることがあります。一方、マラソンのように少しずつエネルギーを使って長く走る場合も、疲れが徐々に溜まり体が限界に達します。
ばねも同じように、使い方によって「へたり方」が異なります。
- 圧縮ばねのへたり:強い圧力がかかる環境で、徐々に寸法が縮む。
- 引張ばねのへたり:引っ張る力で、少しずつ元の長さに戻らなくなる。
- ねじりばねのへたり:回転する力でたわみが固定され、動きが鈍くなる。
高温環境での「へたり」の増加
ばねの「へたり」は、温度が高いほど進行しやすい特徴があります。
材料にもよりますが、高温になると金属内部の結晶構造が変化しやすくなり、弾性を保つ力が弱まります。
特に、耐熱性の低い材料で作られたばねは高温下で急激にへたる傾向があるため、長期間使用する環境温度に注意が必要です。
「へたり」に対する対策:設計と素材の工夫
ばねの「へたり」を防ぐためには、設計や材料選びが重要です。
次のような対策をとることで、ばねの寿命を延ばすことができます。
へたりにくいばね設計
ばねが繰り返し強い力を受ける場合、応力を分散するように設計変更を行います。例えば、ばねの荷重時にかかる応力を下げることで、「へたり」にくいばねを作ることが可能です。
素材の見直し
現在、硬鋼線(SWC)を使用しているばねをピアノ線(SWP-A)に変更するなど、より強い材料にすることで、耐久性が増し「へたり」を抑える効果が期待できます。ピアノ線は硬度が高く、応力がかかってもへたりにくい特徴を持っています。
まとめ:ばねの「へたり」を知り、長く使えるばねを目指そう
ばねの「へたり」は、その使用環境や条件によって異なりますが、設計や材料選択によって抑えることが可能です。
適切なばね設計や材料を選ぶことで、長く信頼できるばねとして使用することができます。
定期的なチェックとメンテナンスも、「へたり」を防ぐために欠かせません。